ドライマウスの原因とは
お口が乾燥してくる症状を、ドライマウス(Dry Mouth)といいます。ドライマウスになったときは、唾液の分泌量が減少しています。
唾液は、食べる、飲む、話すなど人間が生きて活動する上で欠かせない要素のひとつです。唾液の分泌量の減少は、健康な生活をおくる上での障害となります。唾液が減少することでドライマウスになると、どのような影響があるでしょうか。
ドライマウスとは
ドライマウスとは、喉の渇きだけでなく、お口の中全体が乾燥する状態のことをいいます。日本語では、口腔乾燥症とよばれます。
ドライマウスの症状
唾液の分泌量が減少することで、お口が乾燥しやすくなります。それは、のどが乾きやすくなることにも繋がります。
また、お口が乾燥すると、唾液の流れが悪くなるのでネバネバした感じになったり、お口の中が赤くなってきたりします。パンやビスケットなど乾いた食べ物が食べにくくなってきます。それだけでなく、いろいろな食べ物の味がわかりにくくもなります。
入れ歯がはり付くようになるので、入れ歯が入れにくくなったり、痛くなったりします。唾液には消化を助ける役割もあるので、唾液が減ると胃腸の調子が悪くなることもあります。
唾液の役割
抗菌作用
唾液の中には、ラクトフェリンやリゾチームとよばれる抗菌作用のある成分が含まれています。細菌がお口の中で増殖しにくいようする働きがあります。
洗浄作用
お口や歯の表面の汚れや、細菌や食べ物の残りを洗い流し、きれいにする働きがあります。
傷を治す作用
唾液の中には、傷を治す作用のある成分が含まれています。
歯の再石灰化作用
むし歯は、むし歯菌が乳酸を産生し、歯の表面を溶かすことでおこります。むし歯菌が歯を溶かすことを脱灰といいます。脱灰された歯は、まず表面に白い濃い模様が現れます。このとき、唾液の中の成分により、脱灰部分を修復しようとする働きがうまれます。これを再石灰化といいます。つまり、唾液には初期のむし歯を治す作用があります。
消化作用
唾液の成分には、アミラーゼやリパーゼとよばれる食べ物を分解する働きのある成分が含まれています。お口でしっかり噛むことで、唾液により食べ物を消化しやすくなります。
緩衝作用
お口の中のpHが中性になるように調整する働きがあります。
潤滑作用
唾液には潤滑剤の様な働きもあります。これにより、舌や頬の動きを滑らかにします。発声が滑らかになる様な効果もあります。
ドライマウスによる影響
口臭
お口が乾燥すると、お口の粘膜についた汚れや、タンが乾燥してへばりつくようになります。また、唾液により細菌を洗い流すことが出来なくなり、特に口臭の原因となる細菌が増えやすくなります。この細菌は、嫌気性菌とよばれ、酸素が多い環境では生存しにくいタイプの細菌で、乾燥してへばりついた汚れの内側などで、繁殖します。これらの理由により、口臭が生じるようになります。
むし歯や歯周病
ドライマウスになると、唾液によってもたらされてきた歯の健康への恩恵が期待出来なくなります。すなわち、歯の表面を唾液が洗い流すことがなくなるので、汚れがついたままになりやすくなります。それどころか、乾燥してとりにくい汚れになってしまいます。こうした汚れは、むし歯菌や歯周病菌にとって格好のすみかとなります。
また、唾液の抗菌作用が働かなくなるために、むし歯菌や歯周病菌が増えるのを押さえることが出来なくなります。そして、唾液による再石灰化が望めなくなることにより、むし歯の進行を阻止出来なくなります。こうした理由により、むし歯や歯周病になりやすくなるのです。
肺炎
唾液が、お口の中の汚れを洗い流すことが出来なくなるだけでなく、抗菌作用が及ぼされなくなる、汚れが乾燥してくっつくようになります。これにより、お口の中での細菌の量が増えます。細菌を飲み込むことにより、誤嚥性肺炎とよばれる肺炎を起こすようになります。
肺炎は、日本人の死因の上位にあげられる恐ろしい病気です。見方を変えれば、ドライマウスの改善は、誤嚥性肺炎のリスクを下げることができるともいえます。
ドライマウスの原因
ドライマウスの原因はいろいろあり、ひとことで言うことは出来ません。
唾液が蒸発しやすくなっている
鼻ではなくお口で呼吸をする口呼吸や、脳の病気などにより長時間お口を開けたままでいたりすると、唾液が蒸発しやすくなるので、ドライマウスになります。
唾液がでにくくなっている
唾液を作るおおもとの部分である唾液腺が傷つくこともドライマウスにつながります。
唾液腺が傷ついてしまう原因としては、手術やケガ、放射線治療などがあげられます。
唾液腺に伝わる神経の異常
唾液を出すように指令を出す神経がうまく機能していない時、ドライマウスをおこすことがあります。
この原因としては、薬の副作用やうつ病、強いストレスなどがあります。
唾液腺が破壊される病気
シェーグレン症候群という病気があります。この病気になると、唾液腺が破壊されるため、ドライマウスを引き起こしてしまいます。また、お口だけでなく、目の乾燥感も症状のひとつにあげられます。その他、糖尿病も唾液腺を破壊してしまうことがあり、この結果ドライマウスを招くことがあることが知られています。
病気以外の原因
唾液の分泌は、精神的な影響をとても受けやすいです。緊張した時に、お口がカラカラに渇いたりするのもそのひとつです。緊張や不安が高まると、唾液の分泌量が低下するようになり精神的な要因から口の中が乾いた状態になることもあります。
歯並びとドライマウスの関係
シェーグレン症候群や放射線治療などにより、唾液腺が機能しなくなった影響でのドライマウスもありますが、唾液腺に異常を認めないドライマウスもあります。
すなわち、唾液腺を刺激されないために唾液が分泌されないドライマウスです。これは、噛む回数が足りていない、もしくは噛み合わせる力が弱いことなどが大きく影響しています。
実は、食事に際して、食べ物をしっかりとよく噛むということは、飲み込みやすくするだけでなく、唾液の分泌を促す働きもあるのです。この働きは、噛むことにより唾液腺の周囲の筋肉が動き、唾液腺が刺激されることにより起こります。
もし、歯並びが悪く、しっかりと噛むことが出来ないばかりに、ほとんど飲み込んでしまっているような状態であれば、唾液腺が刺激されません。その結果、ドライマウスになることが考えられます。
そんなときは、矯正歯科治療を考えるといいかもしれません。噛み合せがしっかりしたものになることで、食べ物をよく噛むことが出来るようになります。そうすることで、よく噛んで食べることができるようになれば、唾液腺が刺激されドライマウスの解消にも一役立てるようになるでしょう。
また、食事に時間がとれない様な方であれば、食事と食事の間の時間にガムを噛むのもいいでしょう。食事の時に唾液腺が刺激されるのと同じ理由で、唾液腺が刺激されます。その結果、唾液の分泌が促進され、ドライマウスの解消を見込めます。
もちろん、歯並びが良くないとガムをしっかりと噛むことも出来ません。矯正歯科治療を受けて歯並びを整えるということは、こういった面の改善効果も期待出来るのです。
まとめ
唾液には、洗浄作用や抗菌作用、再石灰化作用などいろいろな役割があります。こうした役割によって、お口を守ってくれています。
ところが、唾液が減少するドライマウスになると、唾液がもたらしていた恩恵が受けられなくなります。その結果、口臭やむし歯、歯周病だけでなく肺炎のリスクも上がってきます。唾液腺の病気により唾液が分泌されにくくなる場合もあれば、唾液腺の機能は正常なのにドライマウスになることもあります。
食べ物を噛むと、筋肉の刺激により唾液の分泌が促されます。ところが、噛む回数が少ないと、刺激が足りず分泌量が増えません。歯並びが悪く、噛みにくいためにしっかり噛まずに飲み込んでいる様な人にとっては、矯正治療をして歯並びを改善することはドライマウス対策に有効でしょ