症例報告

短期間の治療 + 裏側矯正(上) 表側見えない矯正(下)

患者さまの主訴は、前歯の「がたつき」と「出っ歯」、そして「前歯がかみあわない」「発音がしにくい」 そしてご要望は、「裏側からの見えない矯正」と「早く終了したい」「短期間の矯正治療を希望したい」でした。

初診精密検査時

初診精密検査時

上顎、下顎ともに、ガタつき、乱ぐい歯があります。
特に上の前歯には大きな「乱ぐい」があります、いわゆる「八重歯」、 また「出っ歯」にもなっています。

さらに上下の前歯の間には、大きな隙間が開いています。前歯がかみ合わない状態です。(「開咬」と言います)

奥歯

奥歯
次の写真です。奥歯をご覧ください。わかりにくい所、気がつきにくい所ですが、ここが非常に悪い所、かみあわせの不良があります。

臼歯(奥歯)の部分が上下逆になっています。(通常は、下顎の横幅よりも上顎の横幅の方が大きくなくてはいけません。)上あごが狭さく(狭い状態)しています。(「交差咬合」ともいいます)

上あご

上あご
上あごの写真です。裏側から撮影したものです。重度の乱ぐいと歯のアーチのゆがみが大きいです。(正常な歯のアーチ、歯の配列した形状はUの字型ですが、V字型で狭さくしています)

下あご

下あご
下あごの写真です。上あごと同様に重度のでこぼこ、乱ぐいがあります。
不正咬合の程度、治療難易度:重度
治療の難易度は、高く、矯正学的には難しい症例です。また裏側矯正と短期間の矯正治療の適応により、さらに難易度は上がります。

治療装置:上顎:裏側(舌側)矯正 下顎:表側の見えにくいクリアな装置

<スマイルコンセプトでの矯正治療の開始にあたって>
矯正装置については、幾つかの候補から自由に選択して頂きます。初診相談時、および診断時では、各種矯正装置の特徴、メリット、デメリットを専門家の立場から、詳細かつ情報をお伝えいたします。その上で、治療効果、費用、装置の異物感、見た目等を総合的に考慮され、担当医との相談の上で選択されると宜しいと思います。この方は上下裏側でも上下表側でも、どちらでも治療が可能です。すべての方が裏側矯正治療でも表側でも治療が可能です。

治療期間:予測期間 おおよそ12カ月

治療装置・治療期間について、一般的に裏側矯正治療は治療期間が長くなる等との情報が流れているようですが、裏側矯正でも治療期間の延長はありません。表側と同一です。

また仮に裏側矯正の治療期間が長くなるとするとこのような予測期間を算出することが出来ません。短期間の矯正治療以外の矯正治療の場合には、このような歯並びの状態ですと、通常約2倍以上の治療期間が必要です。

ただし個人差があります。個人差についての詳細は初診相談時もしくは診断時にご相談下さい。各個人に合わせた治療計画や予測治療期間をご説明させて頂きます。

治療計画:小臼歯抜歯、短期間の矯正治療併用法

精密検査→診断の結果、いわゆる「抜歯」(上下左右とも小臼歯 計4本)にて治療を行う計画としました。診断時には、患者様へ 「抜歯をした場合の治療効果」と「非抜歯での治療効果」を両方ご説明を致しました。(歯並びは両プランとも良好になりますが、その他の違い等について、口元の予測写真や各種シミュレーションを用いて口頭だけでなくビジュアルを交えて詳細をご報告致します。)

また診断の際には、患者様と綿密な相談を行い、様々な観点から総合的に検討を行います。諸検討の結果、やむなく抜歯と致しました。この方の場合、非抜歯で治療を行うと前歯の後退(出っ歯の改善)が達成出来ません。歯の「がたつき」も「出っ歯」も「かみ合わせの不良」もすべて達成出来る治療計画を選択されました。複雑で高度のテクニックが必要です。(治療計画について今回詳細は省きます。機会を見てお話させていただきます。)

また当初からのご希望の「出来るだけ早く治療を終了したい」とのご要望を受け、短期間の矯正治療を計画致しました。精密検査のデータからは、歯ぐきや歯を支える骨(歯槽骨)の異常な吸収やダメージ等、重度、中等度の歯周組織の問題はありませんでしたので、TEO、PAOO、歯周再生治療を併用する計画は立案しませんでした。(歯周再生治療とは、失ってしまった歯ぐきや歯を支える骨を再生することが出来ます。一般的な矯正治療のみではこの効果は発揮しません)

しかしながら上あごの犬歯部の歯ぐきは、歯の位置不正の影響もあり良好ではありません。この部位は矯正治療後に再診断、必要があれば歯周再生治療を適応し、痩せた歯ぐきを再生治療によって回復させる計画としました。

歯肉炎、および軽度の歯周炎、また虫歯が、認められましたので、矯正治療準備を行いながら歯肉炎、歯周炎、虫歯の治療をスマイルコンセプトにて迅速に行いました。

その後、上顎に、裏側矯正装置装着、短期間の矯正治療:コルチコトミー併用法の施術を行いました。短期間の矯正治療も現在様々な方法がありますが、今回適応を行いましたのは、ベーシックなDr,suyaコルチコトミー併用法(詳細は、こちらをご覧ください。に加え、上あごの側方への拡大の為に側方部にも追加のコルチコトミーを加えました。

このケースは上あごが狭さく(狭い)していることを前述していますが、このままコルチコトミ-を併用せずに、矯正治療単独で側方へ拡大(上あごの幅を大きくする)を行うと、大変危険な状態が惹起されてしまいます。簡単に申しますと上顎の骨から歯の根が露出してしまい、歯周病を惹起し、増悪させてしまう危険性があります。いわゆる歯のならびは整ったように見えるが、歯ぐきや顎の骨の状態は治療前よりも増悪した結果を生むことになってしまいます。それでは矯正治療の意味がありません。矯正単独治療の限界があります。専門医からするとここが非常に重要と考えています。やみくもに矯正治療だけ行ってもあまり意味がないと考えています。医院には、総合的な歯科診断・技術力が必要です。

◆ スマイルコンセプトでは
矯正治療の大きな目的は、歯並び、かみ合わせはもちろん、歯ぐきや歯を支えるあごの骨の状態も良好な環境にし、口腔内の健康を永続的に守ることが出来る「より健康な状態」を目指すことを目的として考えています。

矯正治療開始

上あご裏側矯正装置装着時

上あご裏側矯正装置装着時

コルチコトミ-施術時の写真です。
(器材 ピエゾサージェリーによるコルチコトミー施術が行われています。写真は、上あごの幅の拡大を安全に治療することが出来るように追加した治療を行っている時の写真です。この追加により顎の骨の良好な位置に歯を移動することが可能です。)

またコルチコトミー施術時に歯の抜歯も同時に行いました。歯の抜歯は、どなたでも良い気分ではありません。今回のように いやな思いは一回で終了させてしまうことも可能です。なるべく様々な負担を軽減させることを心がけて治療計画を立案しています。初回の治療時間は約2時間弱でした。

開始後約2カ月後

開始後約2カ月後

開始後約2カ月後の写真です。コルチコトミーによって歯の移動が活性化され迅速に移動しています。歯並びのガタつきや上あごが狭さくし奥歯のかみ合わせが逆転していましたが、随分と治ってきています。

また歯ぐきの色、形をよくご覧ください。歯ぐきの状態もほぼ良好です。まだまだ歯ぐきの形状は変化しますので、今後の写真にも注目して下さい。(この頃のスマイルコンセプトには、マイクロスコープは導入されていません。ピエゾサージェーリーは使用しています。マイクロやピエゾについての詳細はブログをご覧ください。術後の状態は非常に良好です。今後は、マイクロ導入によって、益々最小限の侵襲で、より正確で精密に、そして安全に歯周治療を行うことが出来ます。 痛みが少ない、治りが早い、きれいに治るなど、多くのメリットがある治療法をご提供することが出来ると思います。)

約3.5カ月後

約3.5カ月後

開咬(前歯がかみ合わない状態)も随分と治ってきました。がたつきの治療だけでしたら、5か月程度で終了してしまうかもしれませんが、出っ歯や開咬を治すために治療は継続します。上下の前歯を後退させながら、さらにかみ合わせを整えます。

上顎治療の推移

・装置装着

装置装着

矢印

・約2ヶ月目

約2ヶ月目

矢印

・約4ヶ月目

約4ヶ月目

抜歯した隙間はほぼなくなりました。また八重歯やガタつきも、ほぼ良好になってきています。

矢印

・治療開始約5.5ヶ月目

治療開始約5.5ヶ月目

ガタつきや八重歯の修正だけでなく上顎の横幅やアーチ(歯列弓の形状)に注目してください。随分と良好になってきました。

下顎の経過

・初診時

装置装着

矢印

・約4ヶ月目

約2ヶ月目

矢印

・約5.5ヶ月目

約4ヶ月目

抜歯した隙間はほぼなくなりました。また八重歯やガタつきも、ほぼ良好になってきています。

矢印

・約7ヶ月目

治療開始約5.5ヶ月目

重度であった開咬も良好になり、前歯でかみ合わせることが出来るようになってきています。見た目だけでなく機能も良好になってきています。

患者様談:「前歯で物をかめるようになってきました。すごくうれしい」と喜んでおられました。また「こんなに早く治るのならば、もっと早く短期間の矯正治療をしていれば良かった」とのコメントを頂きました。

この仕事をしていて「良かった」そしてスマイルコンセプトスタッフ全員(医師、歯科衛生士、歯科技工士、受付秘書)が一丸となって、益々ガンバロウと思う瞬間です。

上あごと下あごの横幅

上あごと下あごの横幅を見てみましょう、上あごの奥歯のコルチコトミーの追加によって上あごの臼歯の拡大が良好に達成されてきています。矯正治療のみの側方拡大ですと歯の根が歯ぐきから露出することがありますが、奥歯の歯根の露出や歯ぐきの退縮(歯ぐきが痩せる)は、全くありません。
もう少しで終了です。さらにかみあわせをしっかりさせます。

・治療11ヶ月目

治療11ヶ月目

装置を撤去致しました。順調に終了しました。

初診時と比較

初診時と比べてみてみましょう。見違える程良好になりました。前歯のがたつき、八重歯、上下の前歯の左右のずれ、かみ合わせのずれ、開咬、奥歯の逆のかみ合わせのずれ、などすべての治療が達成出来ました。

初診時と比較

左右の状態です。奥歯の逆のかみ合わせや奥歯の歯ぐきの状態も良好です。

最後に

矯正装置撤去時には、審美歯科からのアドバイスを行います。ご希望に合わせて各種治療をご提供致します。この方のアドバイスとしましては、

(1)歯の形
もう少し歯の形をきれいに整えても宜しいと思います。(歯の形態は見た目の問題だけではありません。よい機能を持った歯は、結果的に見た目も美しい歯になります。)不正咬合の影響で前歯の先端が欠けていたり、ギザギザになっていたり、様子を見ていた昔の虫歯の治療跡が今一つの所や歯の変色があります。
(2)黄ばみには
全体的な黄ばみや変色歯に関しては、まずホワイトニングがお勧めです。ホワイトニングは、自宅で簡単に出来る ホームホワイトニング、もしくは歯科医院でもう少し強力な薬剤を使用して1、2回で終了するオフィスホワイトニングがあります。(スマイルコンセプトには、日本歯科審美学会 ホワイトニングコーディネーターが数人在籍しています。)

まずホワイトニングを行い自分自身の歯をきれいな色に変更、そのきれいな歯の色にあわせて変色歯の治療を行うと全体的に歯の色を統一することが出来ます。

(3)変色には
変色が強い所や虫歯の治療跡が大きい場所には、付け爪のようなセラミックシェル(ラミネートべニア)を使用すると自分自身の歯を限りなく保存(温存)し機能的にも、審美的にも良好にすることが出来ます。(いわゆる差し歯にする場合には、歯を360度削除しなくてはいけません。不用意にあまり大きく歯を削除するのはお勧めいたしません。通常の歯科医院で保険のきかない差し歯にする場合には、360度削除して差し歯を装着します。

ちなみに私Y、KIJIは、矯正治療と審美補綴(ラミネートべニア)は、命を懸けて研鑽を積んでいます。自信をもってお勧め出来る治療です。ちょっと大げさですが、、、。(笑!))

(4)歯ぐきの位置
位置不正の強かった上あごの犬歯(前から数えて3番目の歯(とんがって見える歯)部の歯ぐきの位置は、完璧ではありません。歯ぐきの成熟を待って、必要があれば歯ぐきの再生治療、歯周形成外科:CTG(結合組織移植)を行っても良いかもしれません。経過観察を行います。

CTGを行う際には、前述のマイクロスコープが本領を発揮します。歯周専門医が治療をご提供致します。現在では、自分の歯ぐきを移植することや人工皮膚を移植することまで可能です。(皮膚科、形成外科ではすでに臨床応用されています。やけど、あざなどの治療にも使用されている安全な治療法です。)

スマイルコンセプトは、矯正歯科だけでなく審美歯科、一般歯科も治療可能です。
歯並び、かみ合わせの治療はもちろん、歯ぐきの状態や虫歯の改善、歯の形、大きさ、色、なども整えるトータルな歯科治療をご提案させて頂いております。