過蓋咬合
(かがいこうごう)
過蓋咬合(かがいこうごう)とは?
過蓋咬合とは、かみ合わせた時に、下の前歯が見えないような、前歯のかみ合わせが著しく深い噛みあわせを言います。
これは、歯の位置や傾きの異常によって起こっているもの、上顎骨または下顎骨の位置異常や大きさの不調和によって起こっているものなどが考えられます。
成長期に過蓋咬合が認められる場合、正常な顎骨の成長が起こらず、いま以上にその状態が悪くなる可能性があります。
原因は?
- ご両親から受け継いだ大きなあごの骨
- ご両親から受け継いだ大きな歯
- 不十分かつアンバランスなあごの骨の成長(下あごの成長不良、上あごの過剰な成長)
- 口腔周囲筋(くちびるやほっぺの筋肉)の緊張
- 前歯の過剰な萌出、奥歯の萌出不足
- 悪い癖によるもの(指しゃぶり、舌癖、口呼吸)
- 鼻の病気によるもの
放っておくとどうなるの?
- 咀嚼障害(咀嚼能率の低下、咬合力の低下)
- 嚥下、発音がしにくい
- お顔の印象が悪い(口元の出っ張り、下あごが下がった感じなど)
- 前歯に外傷を受けやすい
- 顎関節症の原因になることもある(下あごの運動障害、痛み、音)
- 全身への影響(胃腸障害、肩こりなど)
- 口腔内の清掃不良・虫歯になりやすい・歯肉炎、歯周炎になりやすい・口臭の原因
過蓋咬合の場合の矯正治療
5歳以下の場合、全ての歯が乳歯の場合(永久歯が一本も生えていない状態:乳歯列期)
乳歯列の場合の“過蓋咬合”は、通常、経過を観察する場合が多いです。
半年に1回定期検診にお越しいただき、歯並びの状態がどのように変化してきているのか、その他に問題が引き起きていないか、などをチェック致します。
ただし、過蓋咬合になっている原因が、何なのかをきちんと調べておく必要があるかと思います。
この年代の過蓋咬合は、悪い癖などによって歯並びが悪くなっている場合が多いようです。
この場合、歯科矯正自体の治療は行いませんが、悪い癖をなるべく止めれる方向に誘導致します。この悪習癖を除去することによって、2次的な不正の防止や過蓋咬合が改善することがあります。
6歳から10歳の場合
これには、
・前歯の歯の生え方が悪くて出っ歯、過蓋咬合、になってしまった方
・あごの発育がバランスよく成長せず、あごの骨ごと過蓋咬合になってしまっている方
・悪い癖(下唇をかむくせ、指しゃぶり、口呼吸など)によって、過蓋咬合になってしまった方
などがあります。
矯正歯科治療開始の時期
過蓋咬合の矯正治療は、すべての永久歯が生え揃ってから、開始すればよい?
答えは、NOです。
もちろん個人差はありますが、すべての永久歯が生え揃ってからでは、遅い場合があります。
悪くなった歯並びを治療するのではなく、悪くなる前に歯列矯正の治療をする!ことをお勧めいたします。
特に、あごの発育が悪い方の場合、成長期を利用して、あごの発育が良好になるよう誘導することが出来ます。
通常、歯科矯正治療の開始や管理下に入るにふさわしい時期です。このような状態になってしまった場合、きちんと現状の状態を矯正歯科を専門に行う歯科医師に確認してもらう必要があります。通常この時期より矯正歯科医の管理を受けていただくと、将来的にも悪いかみ合わせになりにくいと思います。
またこの時期より矯正歯科治療を開始すると、永久歯の抜歯を回避しやすい時期でもあります。抜歯は、“絶対いや”と言うご両親は、この時期までに、ぜひ矯正歯科を専門に行う歯科医師にご相談されることをお勧めいたします。
アメリカ矯正歯科学会、日本矯正歯科学会では、7才までに矯正歯科を専門に行う歯科医師による歯列矯正の診断を受けていただくことを推奨しています。
あなたのお口の過蓋咬合になった原因や程度にもよります。
(通常、治療期間6ヶ月前後)
通常、治療期間1~1.5年前後
などがあります。
この時期には、通常の全体的な矯正装置は必要ありません。もっと簡単な装置で、矯正歯科治療が可能です。
11歳以上25歳未満の場合(永久歯列期)
あごの成長のバランスが悪く、かつ全身成長が大きく残っている場合(身長が、伸びている方)
あごの発育が悪いが、成長が残っていない場合(身長がほぼ伸び切ってしまっている方)
歯の過蓋咬合が、比較的わずかな方(過蓋咬合のわずかな方)
治療期間も通常の方(2~3年)よりも比較的短期間に終了する場合が多いです。(約1~1.5年)
歯の過蓋咬合が、比較的大きい方(過蓋咬合の大きい方)
現在のあごに今生えている歯がすべて収めることが出来ず、あごの骨から歯が溢れかかっている状態の場合、永久歯の抜歯が必要になる方もいます。
ただし通常の矯正治療法に加え、付加的な装置(例歯科矯正用アンカーススクリュー)を併用することにより、歯の抜歯を回避できる方もいます。治療期間は、約2年前後。
おとなの場合(20歳後半以上・成人矯正)
過蓋咬合矯正のメリット・デメリット
メリット
- 歯を健康に保ちやすくなる
- 見た目が美しくなる
- 歯の着色が起こりにくくなる
- 口臭が改善する
- 発音が明瞭になる
- よく噛めるようになり、消化吸収が良くなる
- 顎関節の不調や頭痛、肩こりといった不定愁訴が改善する
- 健康でハツラツとした老後を送りやすくなる
デメリット(リスク・副作用)
- 矯正時に抜歯が必要になることがある
- 治療中に痛みが出ることがある
- 治療期間がかかる
- 治療費が高額になる
- 食事が不便になることがある
- 治療中に虫歯や歯周病のリスクが高まる
- 歯茎が下がることがある
- 治療後に後戻り現象が起こることがある