矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療って?

どんな治療なの?

矯正治療が効率的になる矯正用アンカースクリューを応用した矯正治療法

矯正用アンカースクリュー・アンカー矯正・TAD、など色々な呼び名があるけれども、どんな治療なの?
まずインプラントと聞くと、歯が抜けた後、入れ歯の代わりに埋め込む人工歯根・デンタルインプラントを想像される方もいるかも知れませんが、矯正治療で使用するインプラントは、矯正治療中にのみ一時的に使用するマイクロインプラントと呼ばれるものでインプラントとは呼ばれていますが人工歯根として使用されるデンタルインプラントとは全くの別物です。矯正治療専用のミニインプラントを使用する治療方法です。アンカー矯正、sas,スケレタルアンカレッジシステムなどと呼ばれてもいますが、正式には、TAD:temporary anchorage devices(以後TADと記載します)と言います。歯の近くのあご骨の表面に、ピアス状やプレート状のTADを装着し、それを固定源として矯正する方法です。

現在TADにも様々なタイプが開発されていますが、使用目的に応じて使い分ける必要があります。一方、TADを全く必要としない方もおりますので、治療目標に応じてご選択なさると宜しいと思います。

まずは、どのようなものなのかご覧ください。

・Temporary Anchorage Devices (TADs)
・Solutions By DesignTemporary Anchorage Device (TAD) – Orthodontic Device

矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療の特徴

いま、矯正診断や矯正治療法が大きく様変わりしようとしています。今まで困難とされてきた方向への歯の移動(圧下:歯の上下的な移動や遠心移動:歯の前後的な移動、その他)が効率よく移動出来るようになってきました。

従来型の歯列矯正治療法では、限界とされてきた部分を大きく改善する事が可能です。これにより非常に質の高い治療をご提供する事が可能になってきています。

例1:出っ歯の方の場合

出っ歯

出っ歯の方では、患者さまの骨格に適した理想的な位置にまで歯を移動することが可能です。TADを併用することで上の前歯を効率よく後退させることが出来ます。また歯の抜歯が回避出来る方も増加しました。美しいお口元が早期に生まれ、かつかみ合わせもさらに良好にすることが可能になりました。

例2:ガミースマイルの方の場合

ガミースマイル

ガミースマイルの方の場合(左図)、TADを併用し上の前歯を上方に移動すると歯ぐきの露出が改善され右図のようにガミースマイルを治すことも可能です。(尚、ガミースマイルの原因も個人差があり、原因に応じて治療法も様々ですので、初診相談時にご相談ください)

6つの特徴

1. 治療効果が、数段向上

歯の移動制限が少なくなり、あなたに最良な治療結果を生み出すことが可能です。従来型のみの矯正治療の効果、治療結果よりも、効果、治療結果が数段向上します。

2. 治療時間の短縮

治療の効率化が図られ、結果的に治療期間の短縮が可能になりました。治療期間についてはページ後半に詳しい説明がございます。

3. 永久歯の抜歯の回避が可能に

今まで抜歯をしなくては治療できなかった方も、歯を抜歯せずに、よい歯ならびにすることが可能。(※注:全ての方が、非抜歯の治療が適応できるとは限りません。適応可能かどうかは初診相談時にご相談ください。)

4. へッドギアなど違和感の強い装置が不要

へッドギアなど頭にかぶらなくてはいけなかった、見た目も悪くまた、違和感の大きな矯正装置やお口の裏側に付ける必要性が生じる違和感の強い装置が不要になりました。

ヘッドギアを毎日使用できない方、そのような装置使用を避けたい方、また面倒な方、見た目も悪くていや、発音への影響が心配という方でも治療法や矯正装置の単純化が可能になり、快適に矯正治療を行うことが出来ます。

5. 手術回避が可能

昔の技術では、外科手術をしなくてはいけなかった方の手術回避が可能になりました。

6. 外科手術の単純化が可能

広範囲な手術を回避したり、矯正治療の単純化が可能になりました。

よくあるご質問

矯正用アンカースクリュー・オーソアンカーも色々なものがあるけど、どれを選べばいい?

アンカーの種類によって適応症が異なります。大きく分けるとプレートタイプと小さなねじタイプです。スマイルコンセプトでは、現在4種類のアンカーを使用しています。それぞれ適応症がございます。あなたの噛み合せに適したアンカーの選択が必要です。

矯正用アンカースクリュー・TADは、どのくらいの医院が使っているの?

TAD矯正法は、日本の矯正学会でも、ここ2、3年でようやくトピックにあげられるようになりましたが、それまで日本では全く議論すら行われませんでした。もちろん国内では、ほぼ教育の機会もありません。

それまではほとんどの日本の矯正の先生達は、「写真では見たことがあるけれども」「話は聞いたことあるけれども」というのが実情でしたが、ようや2014年に薬事承認され、日本メーカーからもTADがデリバリーされ始めました。

それに伴い日本の矯正界でも認知され始め、TADを使用なさる医院も少しずつ増えてきました。それでも実際治療に応用使用し、効果を上げているのは矯正歯科を専門に行う歯科医師の約20~30%程度でしょう。残念ながら日本ではまだまだ始まったばかりです。

矯正用アンカースクリュー・TADは、いつごろから使っているの?

スマイルコンセプトでは、マイクロインプラントや口蓋(上あごの裏側に装着するタイプ)タイプのものは、開院以前(2000年以前)から、欧米国内で薬事承認を受けたものを輸入し使用を開始していました。当時の矯正用インプラントは、人工歯根として使用するデンタルインプラントメーカーが矯正用に特別にアレンジしたもので器具の取り扱い方、使用法も埋入の仕方もデンタルインプラントと全く同じ扱いでした。

当時の日本では、そのようなインプラント矯正法を学ぶ機会がありませんでしたので、TADやインプラント学については主に海外、ニューヨーク大学や南カリフォルニア大学、TAD先進国・韓国(余談ですが、TADの国際特許はほとんど韓国の矯正医が取得しています)、その他で研鑽を積んできました。

前述のとおりTADとデンタルインプラントは、使用目的が全く別物なのですが、生理学や病理学の範疇では、要するに学問的にはTADもデンタルインプラントも同一扱いですので、TADだけの研鑽に留まらずデンタルインプラント学も同時に学んできました。

矯正用アンカースクリュー・TADは、どのくらいの患者さんが使っているの?

スマイルコンセプトでは、約60%程度の方々が何らかのTADを使用しています。ただ歯並びの程度、治療計画によっては、全く必要のない方もおられます。矯正診断のご説明際に、併用使用したほうがメリットのある方、また治療中に使用のメリットを感じられた方にはあらかじめご説明、ご提案をさせていただきます。

TADのメリット・デメリットを知ったうえでTAD併用法を取り入れるのかどうかということを決めていただくと宜しいと思います。

医院側の都合で一方的に装着するようなことは、一切ありませんので、お気軽にご相談ください。

矯正用アンカースクリュー・TADは、どんな矯正装置が使えるの?

裏側(舌側)の装置、表側の装置、マウスピース型矯正でも、どのようなタイプの矯正装置にも使用可能です。

矯正用アンカースクリュー・TADを装着するのは、大変なの?痛くないの?

まず装着時には、歯科用の部分麻酔をごくごく少量使用します。歯の抜歯の際に使用する麻酔量と比較いたしますと約10分の1程度です。

ミニスクリュータイプのTADの装着は、比較的短時間(1本につき数分)で終了しますので、左右装着する場合でも約10分もあれば十分です。装着時は、痛みなど発生致しません。すこし押されている感じが数十秒生じる程度です。装着後、麻酔が切れてまいりますと多少違和感が生じます。違和感の程度は、少しどこかを擦りむいてしまった場合と同程度の違和感です。1日程度で違和感も消失します。以後痛みなどは生じません。

矯正用アンカースクリュー・TAD装着中の注意点は?

矯正治療中は、矯正装置の周囲のブラッシングが重要ですが、お手入れの仕方は矯正装置と同一です。

TAD装着中は、その周囲を丁寧にブラッシングしてください。お手入れがおろそかになりますとTAD周囲の歯ぐきにばい菌が停滞しインプラント周囲炎になる恐れがあります。周囲に炎症が生じますと歯ぐきがやや赤くなり、歯ブラシなどが当たると痛みを感じることがあります。

周囲炎になってしまった場合、丁寧に汚れを除去し、ブラッシングを継続していただかれると短期間で周囲炎は改善します。

矯正用アンカースクリュー・TADはいつ外すの?

TADは、治療終了時、もしくは目的を果たしたのちに除去致します。除去時間は、装着時間よりさらに短く一本につき数十秒で除去出来ます。除去直後は虫ピン程度の小さな傷口がありますが、ほんの数日で歯ぐきの表面の傷は治癒してしまいます。その後は、特に必要事項はありません。

メリット・デメリット

TADは、治療終了時、もしくは目的を果たしたのちに除去致します。除去時間は、装着時間よりさらに短く一本につき数十秒で除去出来ます。除去直後は虫ピン程度の小さな傷口がありますが、ほんの数日で歯ぐきの表面の傷は治癒してしまいます。その後は、特に必要事項はありません。

メリット

  1. 複数の歯をまとめて、もしくは選択的に移動出来るので、治療効率が向上します。
  2. 一般的な矯正治療では限界とされ、諦められていた方向への移動を可能にしましたので、治療結果が向上しました。
  3. 顎手術を併用しないと治療ができなかった方でも矯正治療単独での治療が可能になりましたので、治療の選択肢が広がりました。
  4. 歯の抜歯を回避することが出来るようになりました。

デメリット

  1. TADの周囲の歯ブラシがおろそかになってしまうとTADの周囲が歯肉炎になってしまいますので、矯正装置の清掃と共に同じようにブラッシングを行ってください。(もしTAD周囲炎が生じてしまっても清掃状況や歯ブラシを良好にするとすぐに治癒します。歯ブラシの仕方等については、治療中歯科衛生士が詳しくご説明致します。)
  2. あごの骨の硬さ、年齢によっては、少し緩むことがある。(女性や若年者では、あごの骨の硬さが緻密で硬くなく、やわらかい方もおり治療中少し緩むことがありますます。その場合TAD治療は継続可能なのですが、締め直しを行うこともあります。)

矯正治療の基礎知識

もう少し詳しく「矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療」や「治療期間の短縮は出来るのか」、「歯の移動スピードは変わるのか」ということについて考えてみよう!

余談ですが、インターネット上の情報では、
・「矯正用アンカースクリューを使用すると短期間の矯正治療になる?」
・「矯正用アンカースクリューをすると、治療期間が短縮する?」
との情報も散見します。

実際はどうなの??
通常の矯正治療の場合、ある自分の歯を元にして他の歯を動かしていきます。しかし、この場合、綱引きの原理(作用反作用の原理)で本来動かしたくない歯まで動いてしまうことがあります。これでは治療上様々なロスが発生してしまいます。
TAD併用矯正の場合、固定されたスクリュー(TAD)を軸に、動かしたい歯のみにアプローチすることが出来、目的とした歯だけがスムーズに移動出来ることや数本の歯をまとめて移動することが出来るようになりました。

このようにTADには、様々な効果を望むことが出来ます。
例えば今まで困難とされていた移動(圧下、遠心移動)を比較的容易に行うことが出来ます。また今までは抜歯を行わなくてはならなかった方々でも、歯の抜歯を回避することが出来るようになりました。その他さまざまな効果が望めますが、表題の通り今回は、「TADは、治療期間を短縮させるために有用か」ということについて記載させて頂きます。

TADを併用すると歯の移動効率は確実にアップさせることが出来ると思います。登山に例えると頂上に向かって一気に効率よく登るというようなイメージでしょうか。ただし、あくまであなたの矯正医が、毎月の治療を毎回最も効率よく組み立て治療進行させることが出来るのが条件です。登山のお話に戻しますと、進む道が定まっていなければ何も変わらないということです。良い道具を使っても使いこなせる矯正診断能力が伴っていなければ治療効率が高まることもなく、折角付与したTADの効果は望めません。

また一番覚えて頂きたい内容は、登山に例えると山の登る速度(歩く速度)が上がるわけではありません。言い換えますとTADは、矯正の治療計画の中で歯の移動効率は、良好になる。しかし、TAD≠歯が早く移動する≠治療期間が短縮する、すなわち短期間の矯正治療とは少し異なります。

TAD併用矯正は、腕の良い矯正医であると広義の意味合いでは、治療効率が良い→治療期間が少し短めになる≒短期間の矯正治療かもしれませんが、厳密には短期間の矯正治療には含まれません。

もちろん治療期間を短縮させるためには、

「適切な治療計画」+「治療効率の向上:TADの併用」+「歯の速やかな移動現象」+「患者様の協力」=「良好な治療結果」+「短期での治療」の達成

と考えておりますので、TADは場合によっては有用ですが、TADを使用したから単純に治療期間が短くなることはありません。(矯正医の中でも、誤認識の方が多いためあえてご説明させて頂きました。笑)

治療期間の短縮がご希望の方