歯の矯正と舌の位置の関係性について
矯正を始めるとワイヤー等の矯正装置をお口の中に入れることになりますが、普段とはお口の環境に違和感を覚える人も多いことでしょう。なかには頬を噛んでしまうという悩みで歯科医院を訪れる人もいます。
なぜ、急に頬を噛むようになってしまうのでしょうか?矯正を始めると、装置によって歯の並びを変えて、見た目を美しくしようとします。それにより普段とは咬み合わせが変わってきます。
人のお口は無意識に筋肉を動かして、ものを噛むという動作をしています。胃袋や腸も無意識に筋肉を動かして、食べ物を運ぶ働きをしています。
このように、矯正によって起こる咬み合わせの変化に頬やお口の筋肉の動きがまだ対応できていないために、矯正前の咬み方でお口が動いてしまうのです。咬み合わせに順応した動きに慣れてくれば、自然と頬を噛むこともなくなってきますが、少し時間がかかるかもしれません。
まずは普段より、ゆっくりと食事を取ることを意識して、頬を噛まないようにしましょう。
舌癖がある人は注意
矯正をするにあたり、舌癖(ぜつへき)がある人は注意が必要です。そもそも舌癖とどんなものなのでしょうか?何かに熱中しているときに、無意識にお口が開いていたり、上下の歯の間から舌を出す、飲み込む際に舌を前に出す動きをしているなどがあげられます。
こうした癖がある方は矯正を行うにあたり、影響が出てしまう可能性があるのです。もともと舌癖がある方は、歯を舌で押し出してしまうため、歯並びが悪くなってしまう恐れがあり、歯並びの悪さは舌癖が原因となっていることもあります。
舌癖にも様々な種類がありますが、口で息をする習慣がある人は、唇の筋力が弱くなり、舌を上顎につける力が弱くなります。また、舌の裏のひもが短いケースでも同様の症状が見られます。
こうした癖を残したまま矯正を進めてしまうと矯正治療が終わっても、舌癖によってもとの位置に歯が戻ってしまう恐れがあるのです。
舌癖はトレーニングで治せる
通常、正しい下の位置は、上顎にぴったり収まっている状態です。人は1日に
600~2000回飲み込むという動作をしているといわれています。その際に歯を押すような動作が加わってしまうと歯の位置が変わってしまうのです。
そのような癖はトレーニングで治すことが可能です。トレーニングは出来るだけ子どものうちに行い、悪い習慣を直させる必要があります。間違った舌の位置を正しい位置へ治し、それを記憶させ習慣化させることが大切です。そのためにはMFT(筋機能訓練)と呼ばれる訓練があります。
これは、月1,2回のペースで行い、6~8カ月かけて行われます。大変なトレーニングにはなりますが、歯並びの悪さが舌癖である場合、舌癖が改善されれば矯正治療を行わなくても、歯並びが改善されることもあるのです。
では、トレーニングとは一体どのようなことを行うのでしょうか?お口周りの筋肉を鍛えるトレーニングと、正しい位置を覚えるためのトレーニングに分けられます。舌が下がってしまっているケースでは、舌を持ち上げるトレーニングを行い、筋力をつけていきます。それと同時に、お口周りの噛む筋力が落ちているケースもありますので、合わせて鍛えるようにします。あとは、舌を正しい位置に置いた時の感覚を覚えさせれば、舌癖は改善されていきます。
トレーニングの一例として、
・舌をとがらせて、舌先で上前歯裏のふくらみを触る
・上記の位置に舌を置き、その後下に下げることで音を鳴らす
・両手をエラに置き、強く歯を噛み、その後、こめかみ、耳と移動させていく
こうしたトレーニングを1日2回2週間行います。
顔の筋肉が鍛えられることから、フェイスラインが引き締められ、美容効果もあるといわれています。お口の筋肉は普段意識して使わないため、疲れるものですが、継続して行うことで効果が期待できますので、まずは続けることが大切です。
まとめ
矯正治療を行うにあたり、舌癖は大きな壁になります。舌癖は飲み込む際に、舌を前に出す動きをしてしまったり、歯を触ってしまう癖のことです。舌癖があると治療後も、歯を触る力が加わることで、歯が動いてしまい、前の歯並びに戻ってしまう恐れがあるのです。そのため、矯正治療を行う場合にはまず、舌癖があるかを確認の上、治療を進めていく必要があります。舌癖が原因で歯並びが悪くなってしまった場合には、舌癖を治すだけで、歯並びも改善されるケースもあります。
舌癖を治すにはトレーニングが必要で、MFTと呼ばれるトレーニングメニューがあります。舌や頬の筋肉を鍛えることで、舌が間違った位置にあるものを修正します。それと同時に下の正しい位置を覚えるトレーニングも行うことで、舌癖を改善していきます。
1日2回のトレーニングを2週間ほど続けます。舌癖の改善はもちろんですが、フェイスラインを整えたり、ドライマウスにも有効と言われています。